建築基準法問題顛末記⑥ 店舗の建築基準法違反
店舗も建築基準法違反?
クリーニングの建築基準法違反問題については、2009年に発覚したが、多くのクリーニング業者が建築基準法で商業地、住宅地で使用が禁止されている引火性の溶剤を、ごまかしたり虚偽申請したりして使用していたことが問題だった。要するにこれは工場の問題だったのだ。
しかし、あまり知られていないが、実は受付だけを行う店舗でもおおっぴらに建築基準法違反をやっていた業者がいた。もちろんそういう業者は、工場も違法操業だった。
店舗での建築基準法違反とは・・・建築基準法では、一定以上の大きさを持つ建造物は行政に届け出してから建設することになっている。物置など3坪以下程度の小さな建物ならそれは必要がない。ただ、現在のクリーニング店はそんな小さなものではとても営業できず、行政への届け出が必要だ。
スーパーなどの駐車場に、ぽつんと小さなクリーニング店が営業していることがある。そういうものの中に、土台がなく、ただプレハブを「置いただけ」の店舗があるという。工場の建築基準法違反で摘発された業界大手は、実は店舗でも数多くの建築基準法違反を繰り返しているという。こういった情報を同業者から聞いた私は「まさか、そこまでやるものかな?」と最初は信じがたかったが、早速調べてみた。ターゲットは当然、建築基準法違反で摘発された業者である。
すると、そういう店舗には確かに土台がなく、ブロックなどの上にプレハブの店舗を「置いただけ」になっていた。ここまでするのかと呆れた。
その顛末
最初は各地の建築事務所に行って「この建物は申請出ていますか?」みたいな聞き方をしたが、結構申請がなかった。その後弁護士のアドバイスを受けて情報開示請求を行い、当該店舗の写真を撮って「この店舗の確認申請文書を見せて」と頼んだ。そんなものないわけだから「ありません」という回答が来る。これで行政は動く。
このようなことで、かなりの数の「店舗の建築基準法違反」が発覚した。弁護士の意見も聞き、「3年以内なら刑事告発も可能」とのことで3年以内と思われた店舗について、警察署に行き、地元警察署に聞いてきて知識で刑事告発を行った店舗もあった。しかしこの店舗は3年前にリニューアルしただけで実は10年前からやっていたという。刑事告発は叶わなかったが、それでもその店舗は警察が来たことによりびびったようで、店舗自体を取り壊してしまった。このような違法店舗は山形県、宮城県、秋田県など広範囲に存在した。各地の行政を廻って
なぜ、このような違法行為に手を染めたのだろうか?やはりそれは経費節減だろう。土台を作ったり、書類を行政に申請するコストを削減することはできるだろう。ただ、発覚したら大変困るのではないか?そこまで考えなかったのだろうか?
後日談
しかしこれは、一業者の不正だけにとどまらなかった。山形県の行政はその後も調査を継続、他社にも違法が見られたという。これは一社だけの不正ではなかった。半世紀も価格競争が続くクリーニング業界で、コストを削減する手段だったのだ。クリーニング業界ではこのような「裏ノウハウ」がいくつもある。違法と知っていながら各社で不正を継続しているのは、クリーニング業者がなにか一般の人間ではなく、日本社会で日本人と共生する別の民族のような違和感がある。
こういった情報をマスコミにも送ったが、記事になることはなかった。おかしなことばかり繰り返すクリーニングはもはや「違法が当たり前」であり、記事にする価値もないということか。
各地で営業していた土台のない店舗