映画レビュー:「乱菊物語」(谷口千吉監督・昭和31年)

映画レビュー

「乱菊物語」(谷口千吉監督・昭和31年)

 

 「白夫人の妖恋」、「空の大怪獣ラドン」などのカラー映画が製作される前の作品。室町時代末期、瀬戸内海の津の 国は、遊女が街を治め、誰もが身分を気にせず暮らす自由貿易都市であった。しかし、ここに勢力を伸ばす豪族がやってきて、遊女を我がものにしようとする。 これを止めようとする男がいた。実は、遊女は滅ぼされた城の姫であり、止めようとした男はやはりかつては身分が高い位にあり、遊女の子供のころからの許嫁 であったのだ・・・。

 谷崎潤一郎の原作を持つこの作品は、全くのおとぎ話だが、円谷特撮はこういう映画にこそ腕を発揮する。秘密の宝物をくわえて飛ぶ鳥や、南蛮船などで技術が発揮されている。

 この作品の中で、大女優、八千草薫が猛烈に綺麗に写る。円谷作品では「ガス人間第一号」に登場するが、日本的な美しさはこの様なおとぎ話の方がより引き立っているように思える。