クリーニング業界の中身を暴き、
消費者にその実態を知らせる暴露本!
題名:ニホンを洗濯する クリーニング屋さんの話
著者:鈴木和幸
発行:駒草出版
発行日:2010年12月10日
価格:¥1500+税
※ 日本図書館協会選定図書に選定される
2005年に私は「苦渋の洗濯!?」という本を発表している。本業のクリーニングについては初めての書物だったが、今回は個人的にクリーニング・シリーズ第二弾。
前からあった企画
前作「苦渋の洗濯!?」では、クリーニングにまつわるクレームの数々をおもしろおかしく紹介し、テレビで何度も紹介された。ただ、本の最後に書かれた業界の内面については、ほとんど話題にならなかった。
そこで、クリーニング業界全体を消費者に紹介するような書物を考え、 企画を持ち込んだりした。多くの人がクリーニングを利用していただいているものの、その実体については誰もがわからない。多くの人が利用するものであれば、それなりに興味を持ってくれる人もいるだろうと思ったし、誰でも利用しているのに、その内容がわからない業種というのもおかしいと思ったからである。 しかし、若干興味を持ってくれたところはあったものの、なかなか実現には至らなかった。結局、クリーニングとは、「誰でも利用しているけれど、そんなに興味がない業種」ということになってしまった気がした。
タブーだらけのクリーニング業界
2009年、クリーニング業界では建築基準法問題が発生する。この話は別項を参照していただきたいが、当方の商圏へ大手業者が進出してきたが、 全然違法な場所に工場ができたので追求してみたら、この業者は他でも同様な方法で不正な展開をしていて、違法出店が発展の要因であったばかりか、他の業者たちも半分以上が違法状態だったというビックリ仰天の結末だった。
「よくもオレ達の秘密をバラしやがったな」これが、意図的に不正を行って発展したクリーニング業者達の言い分である。とんでもない話だが、世の中が善悪に関係なく、多数決ですべて決まるなら、クリーニング業界ではこっちの方が不利だ。
クリーニング業界には厚生労働省認可の組合も存在するが、この公然とした不正問題は扱うことがタブーである。なぜなら、組合員の中にも建築基準法で違反状態の業者があまりにも多いからである。どうやらこの問題に関しては、業界そのものが違反の中にあるようだ。ただ、悪質なものと、そうでないものがあるのも確か。それについては当HPなども参考にしていただきたい。
そして、そればかりではない。平然と法律違反するような業者は、他にも不正な行為を行っている。消費者はそれらを何も知ることなく、毎日クリーニングを利用していただいているのである。
零細対大手のジレンマ
こういった理由から、また本を書いてみようと思い立った。幸い先輩諸氏にご紹介いただいた駒草出版で出していただけることになり、クリーニングの実態を描きたいと思ったのである。
日本は世界一のクリーニング大国。こんなにクリーニング店を利用してくれる国民は他にいない。それだけに、クリーニング業者側としてはちゃんとした利用をしていただき、お客様の役に立ちたいと思う。ところが、あにはからんや業界はどんどん悪くなる一方である。
日本のクリーニング業界は職人の仕事として始まり、昭和32年には組合も結成されたが、オリンピック開催などで景気がどんどん良くなり、他の国にはない、所得格差が非情に少ない「平等な国」の中でクリーニング需要が高まっ たのだった。しかし、機械化が進んだ昭和40年代、大量生産の可能な工場を建設した新規参入業者を昔ながらの職人業者が敵視し、大手対個人という図式ができあがってしまった。他の業種なら大手業者がすぐに業界を席巻するところだが、クリーニングだけは組合に厚生労働省がくっついているため、両者の位置は均 衡・・・業界のコンプライアンスや倫理観はなくなり、業界紙は提灯記事を連発という有様だ。そこに、不正業者の悪質な手段が横行している。これは現在もとどまるところを知らない。ぜひ消費者には現実の姿を知ってもらいたい。
こういうわけで、組合では、大手業者の不正を叩くことをたびたび提案しているのだが、建築基準法問題では組合側にも違反が多い上、各都道府県にある組合及び、それを統括する全ク連は幹部が高齢化し、現在の地位を少しでも保つため、波風が立つことを嫌うのだ。そういうジレンマも本には書いている。
日本図書館協会選定図書
幸い、この本は日本図書館協会が選定する選定図書にも選ばれた。光栄の限りだが、クリーニング業界ではこの書籍は全く話題にならない。その理由は、クリーニング業界の真実をすべてさらしているからである。
かつて、新日本プロレスのレフェリーを長く勤めたミスター高橋が、プロレスの現実を暴露した「流血の魔術 最強の演技」という本を発表したときと同じである。クリーニング業界は、真実をさらされると困るのである。
とまあ、そういうわけで、誰でも利用している商売なのに、実態がわからない商売などあり得ない。この本は業界啓発の書として考えていただければ幸いである。